キャッシング・セラピー
時間不整合性4

時間不整合性のつづきです。(ここまでの話を頭に入れておいてください)
このような時間不整合な選好が、消費者金融の世界で深刻な問題を引き起こす可能性を持つことが最近の研究で分かってきました。
多くの人数の多重債務の経験者に、このような双曲割引の選好があるということが明らかになってきたのです。
なぜ、多重債務者がこのような双曲割引の選好を持っているか、を先ほどの例から説明してみます。
今、あなたは、2008年に10万円を借りて2009年に15万円を返済するローン契約のことが念頭にあるとします。2007年の時点ではあなたは、「こんなローンに手を出すものか」、と考えている。なぜなら、2008年の10万円よりも2009年の15万円のほうが価値(現在価値)が大きいからです。ところが、2008年になると、さきほど説明したように価値が逆転するので、あなたはローンに手を出してしまうのです。
もしも、多重債務者がこのような時間不整合性を持っていて、さらになんらかの方法でそういう人たちを見分けることができるならば、そういう人々には貸し付けをしないような規制が効果的です。それは、ローン会社の貸し倒れが少なくなるという意味だけでなく、時間不整合な人たちに対しては「ローンを借りられない」というコミットメントとして働くことで、彼らの厚生も高めるのです。これは「コミットメントの効用」と同じ効果なのです。
ただし上記の内容は与えられたコミットメントなので、ポイントとしては、自らキャッシングに関して「コミットメントの効用」を作り出すことがセラピーとしては大切です。