手口⑤実際のケース

ある日突然、全く知らないところから「債権譲渡を受けたので今後の支払いはこちらにして欲しい。振込先は…」「5年前に未払いになっている債権の譲渡を受けたので、残債務××円を一括して払って欲しい」といった通知が書面で届けられます。また、こうした通知には「支払いのない場合法的措置をとります」と、精神的プレッシャーをかける文言が記されています。借入のある人ばかりではなく、まったく借入のない人に送付されるケースもあります。

こうした詐欺がまかり通っているということは、思い当たる借入があったり、あるいは通知に「○○社の債権××円」と書かれているため、通知を信用して支払ってしまうことがあるからでしょう。「法的措置をとる」など、何をされるか分からない不安感から冷静な判断ができなくなることを狙っていると考えられます。

現在のところ業界では、不審に思って問い合わせてくる人が増加していることにより手口を把握していますので、問い合わせてきた方の被害は未然に防止できていますが、実際に支払ってしまって被害にあわれている人についてはほとんど把握できていません。

「債権譲渡通知」とは、(1)A社がB社に買収され債権がB社に譲渡された場合、(2)A社が業務縮小などで債権をB社に売却した場合、(3)資金調達手段の一つである債権流動化のために債権を特別目的会社に譲渡した場合、(4)サービサーなどの債権回収会社に債権が譲渡された場合、にその内容を顧客に通知するもので、法律で義務づけられています。この詐欺は、こうした制度を悪用したものです。

しかし、法で定められている「債権譲渡通知」は、元々の契約の内容をきちんと記していなければなりませんので、どこからどのような債権が譲渡されたか分からないようなもの、問い合わせ先が不明のものなどは詐欺であると判断してください。対処としては、思い当たる借入がある方はそちらに問い合わせて確認し、対応に協力を得ること、全く借入がない人は都道府県の貸金業担当相談窓口にお申し出になることです。