住宅ローンに係る特別の扱い

特別の扱いといっても、住宅ローンの債務額が減額される訳ではなく、支払 いを繰り延べる制度に過ぎません。住宅ローンの場合には、ほとんど当該住宅 に抵当権が設定されており、債務者が従前の支払条件で支払いができなくなっ て、破産手続きを申立てた場合、抵当権を設定している銀行などは破産手続き によらずに抵当権を実行して、当該不動産の売却代金を自己の住宅ローン債権 に優先して充当することになります。

しかし、個人再生手続きを申立て、住宅資金貸付債権(住宅ローン債権)に 関する特則を利用すれば、抵当権を実行されることなく、返済し続けることが 可能です。また、毎月の支払額、支払期間について変更することができる場合 もあります。 住宅ローンに関する特則の内容には次の①から③のタイプがあり、裁判所の 認可によって、住宅ローン債権者の同意なしに強制的に弁済の繰り延べがされ ますが、住宅ローン債権者が個別に同意した場合には、支払期間について、10 年を超えた延長や 70 歳を超えた延長、または住宅ローン以外の一般再生債権 の弁済期間内では、元本の支払いを完全に猶予してもらうことなどを定めるこ とができます。

① 住宅ローン債権のうち、既に不履行となっている元利金などを、再生計画 による再生債権の弁済期間(最長 5 年)内に支払うことにより、期限の利益 を回復し、不履行部分以外の将来の元利金については今までの約定通りに支 払う。
② ①によっては住宅ローンの弁済をしていくことが困難であり、再生計画認 可の見込みがない時は、約定の弁済期限を 10 年(ただし、70 歳まで)まで 延長します。
③ ②によっても、住宅ローンの弁済をしていくことが困難であり、再生計画 認可の見込みがない場合には、さらに再生計画による再生債権の弁済期間(最 長 5 年)中は、元本の支払額を減額します。